あみの中東縦断一人旅。

旅日記16 イスラエル編「緊張の入国と、聖地エルサレムで宗教について考える」

さて、死海から帰った後のこと。塩だらけになった体をシャワーで洗い流し、
アンマンの散歩へ。中東サンドイッチを食べながらお店の店員さんとお喋りしたり。
アザーンが流れるモスク目覚まし時計が欲しくて、でも小さいのや
壊れてないのがなかなかなくて、いろんな商店を探し回った。
何件もまわって、店のおじさんと交渉の末、やっと手に入れた!!
中東を旅してると朝5時くらいからモスクから流れる大音量のお祈りで
目が覚める。そんな気分を日本でも体験したくて、買ってしまったのだ。
JDが足りなくなってきたので銀行で少し両替して、ぶらぶら。
お菓子屋さんでお菓子をいっぱい買ったら、ビネガーソルト味のポテチが
大ヒット!スッパムーチョ的な酸っぱさで美味しかったなー。

同じ宿に宿泊している人達で集まって晩ご飯に行く事になった。
6人くらいで、宿近くの「カイロレストラン」にてエジプト料理。
ショーウィンドウに並ぶメニューから好きなのを各自選ぶ。
川魚、ライス、モロヘイヤスープの3品で2.3JD。
コップに入った水が変な味がして、生水なんじゃないかとのことで、
急遽コーラを頼む人続出。もったいなくて一人変な味の水を飲む私。

帰り道で抜け出し、お気に入りの生絞りオレンジジュースを飲み(150Fils)、
昼間何件も回って結局買わなかったミニカーペット、やっぱり買おうと思って
2JDで買って、一足遅れて宿に戻る。ロビーで皆で話してたら、明日イスラエルに
行く旅人が結構いた。私はというと、最初は計画に入れてたけど出発直前に
「お願いだからイスラエルだけは行かないでくれ、危険だから」
と言われたため、歩き方も日本に置いてきてしまい、行くのをやめるつもりだった。
けど、皆で話してるうちどうしても隣国イスラエルに行きたいと思って、急遽行く事に。
元々イスラエルに行こうと思ってた人は、西洋人、韓国人二人兄妹、南米くん。
ロビーで予定を変更して急にイスラエル行きを思い立った旅人、私含め4人。
こうして8人という大人数でのイスラエルへの移動となってしまった。
元々イスラエルを目指していた人にとっては、とんだお荷物だったと思う。
今でもそのときのことを思うと、彼らに申し訳なかったかな、と少し思うのだ。
何はともあれ、話し込んでたらもう深夜。明日6時起きでイスラエルを目指す。

タクシー相乗りでバスターミナルへ行き、バスに乗り、乗り換え、移動続き。
眠いのにバスの中で大音量でニャーニャー流れてた少年の祈りの歌が頭から離れない。
パスポートにイスラエルの入国スタンプを押されると、アラブ諸国に入国できなくなる。
というのも、イスラエルとアラブ諸国とは敵対しているため、イスラエルの入国スタンプ
があるだけで、シリア、レバノン、イエメン、イラク、サウジアラビア、スーダン、リビア、
などの国々には行けなくなる。私は南下組だったので、今回の旅は問題ないけれど、
北上組の人なんかはシリア入国できないし、レバノンから成田に帰国って人もいて、
もしスタンプが押されたら帰国できないよ!!ってヒヤヒヤしてた人もいた。
もちろん私も大好きな国シリアにもう一度行きたかったし、アラブ諸国でまだまだ
行きたい国も沢山あったから、パスポートにスタンプを押さないようにした。
いろんな情報ノートにイスラエルの入国スタンプ情報が載ってた。
「ノースタンプ」と言ったのに押されてしまった例や、押されなかった例、
こればっかりは運だし、押されてしまったらどうしようもないらしい。
ドキドキしながらヨルダン側の国境に辿り着き、イミグレへ進む。
もちろんヨルダンの出国スタンプはパスポートに押さないように。
イスラエルの入国スタンプがなくても、出国スタンプがあったら入国跡が残るから。
ヨルダン側のイミグレも慣れたもので、普通に別紙にポンとスタンプを押してくれた。

またバスに待たされる。陸路国境越えはいつもバス待ちの時間が長い。
そしてバスで国境を越え、イスラエル側のイミグレへ。
荷物検査が厳しく、一度パスポートも荷物も全部持っていかれた。
待合室でひたすら待たされる。情報ノートに書いてあった通り。
ある人は半日以上待たされたりとか。一人一人名前が呼ばれていく。
ぶらぶらみんなで待ってたけど、一人減り、二人減り、なぜか最後の一人。
張り切ってバスを最初に降りたというのに、最後の最後まで待たされた。
荷物も全部預けてしまっているから、本もなくて手持ち無沙汰。
やっと名前が呼ばれて、イミグレ担当官から質問。これがまた長かった。
キビキビとした流暢な英語で、名前、出身などの個人情報から、
旅行に関して、他のアラブ諸国の渡航歴、など、とことん質問攻めだった。
緊張の一時。なんとか別紙にスタンプを押してもらい、「ほっ」としながら
イミグレ通過。こんどはさっき預けた荷物が出てくるのをひたすら待つ。
ちなみにパスポートにはスタンプは押されなかったけど、表紙にシールが貼られ
そのシールが全然剥がれないベッタリ跡が残るタイプのものだった。
パスポートカバーしててよかった・・・。ベタベタに苦戦してる人も。

とりあえずT/Cを数十ドル分両替しておく。国境で待たされている間に、
8人で宿を出たものの、結局バラバラになって、乗り合いバスでエルサレムへ。
バスの中で急に体調が悪くなる。気分悪い、関節痛い、お腹痛い、頭痛い。
今まで旅で体調を崩した事はほとんど無い。いつも気合で乗り切ってきた。
中国で生水のカキ氷食べたときも、少し体調崩すもすぐ元気になったのに。
今回ばかりは、若干死にそう。昨日レストランで飲んだ生水らしき水が原因かなー。
でも症状はインフルエンザっぽい。苦しみながらバスに揺られ、エルサレムへ。
エルサレムでは情報ノートに乗ってたpalm hostelという宿に泊まった。
キリスト教の韓国人のおじさんと、シスターが経営している宿。
奉仕としての経営のため宿の値段は非常に安く、その代わり自分で働き、
キリスト教の精神が根付いている、そんな特殊な宿だった。
宿についたら、出発時のメンバーと再会。ここに泊まる人多いみたい。
オーナーがお腹を空かせたご飯を作ってくれると言ってたけど、
ガイドブックもない私は、もう他の人に頼りたくなかったし、地図を探し
ツーリストインフォメーションにまず行く事にした。

イスラエルの通過はニューシェケル(Shekel、略号NIS)
2007年11月現在1NIS=28.47円らしい。旅中は感覚とドルでレートを考えるから、
日本円でいくらかがはっきり分からなかったけど、ともかく物価が高い!
下手したら日本と同じくらいかそれ以上の物価の高さだと私は感じた。
門を潜り、石造りの道を歩き、中心部へ。インフォメーションは土曜のため
閉まっていて、ガッカリしながら歩いてたら、客引きのおじさんに捕まる。
トゥウェンティーで旧市街を案内してくれるって言うから着いていったら、
「20NISじゃなくて20ドルだけど」とのこと。高い!ということで断った。
なんだ騙してきてー!って思ったけど、先に言ってくれただけまだよしとしよう。
宿から一緒にここまで来た旅人と二人で、そのまま旧市街を歩いてまわる。
とりあえず地図もガイドブックも何もない状況なので、8NISで地図を買う。
イラストでエルサレムを表した簡単なものだったから、全体図としてしか
あまり役に立たなかったけれど・・・。イスラエル旧市街はとても雰囲気が良い。
ああ、ここが聖地なんだって感じる。肌で、空気でそれが分かる場所だ。
石畳と、石の城壁に囲まれて、服装で宗教が分かる。ユダヤ教の服が印象的。
ガイドブックも何もないため、名前が分からないけど、最初に行った場所は
お城みたいな所で、でも土曜日と言う事で閉まっているところだらけだった。
そのまま塀沿いに歩いていって、嘆きの壁まで来た。
広場に入るのには警備が厳しく、鞄をX線に通して、身体チェックを受ける。

イスラエル、エルサレム。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、三大一神教の聖地。
もっともっと中東和平について勉強してから訪れてもよかったかなと思う。
私が軽い気持ちで訪れるよりも、もっと一生掛けて聖地を目指す巡礼者がいる。
トンネルを抜け、嘆きの壁の広場に出たとき、人々を見てそう思った。



嘆きの壁。ユダヤ人にとっては世界で最も重要な聖域。
岩が積み重なって出来た壁の隙間には、信者が書いた祈りの紙が押し込まれている。
遠くからでも岩の隙間という隙間に、びっしりと、白い紙が見える。
訪れた日がたまたま土曜日で、金曜日の日没とともに始まるユダヤ教の安息日
シャバトと被っており写真撮影は禁止されていた。(上の写真は別の日)
壁の前の広場はフェンスで女性と男性の場所に分けられていた。
ユダヤ教徒の服装はとても特徴的だ。男性は黒い服と黒い帽子、立派な髭。
女性も中世の貴族のような気品を感じさせる、真っ黒なドレス。
ユダヤ教の信者たちは、一心不乱に壁に頭をつけ、祈りの言葉を捧げていた。
ある人はずっと本を読み、ある人は頭を壁に打ちつけ、ある人は壁にキスをする。
椅子に座り頭を前後にゆり動かしリズムを取りながら聖書を一日中唱えている。
そして、涙を流している人も多かった。私にはそれが一番の衝撃だった。
必死で祈り、泣いている。祈りに夢中で、周りのことは何も見えていない。
ただ、壁に縋っている。壁に祈っている。執念すら感じられるほどの、祈り。
宗教について考えさせられた。宗教は人の心をこれ程まで揺り動かせるのか。
宗教になじみの少ない日本人、多神教の仏教とは反対の概念である一神教。
この場所では宗教が生きていた。鳥肌が立つ様な、私の中で重く圧し掛かる衝撃。
聖地エルサレムに来てしまったんだ、と実感した。
三つの宗教の聖地であり、様々な民族がこの地を巡り抗争を繰り広げてきた地。
動かなかった。嘆きの壁の前で祈る人を見て、しばらく動けなかった。
何分経ったのだろうか、気づいたときには結構時間が経っていた。

続いて岩のドームに行くも、安息日のためか閉まっていた。
バザールの中、地元民用のいろいろな日用品が売ってる。
10NISで豆コロッケをナンのような皮で包んだサンドイッチを屋台で買い
歩きながら食べるも、体調が悪いため砂を噛んでいるような味しかしない。
朝から何も食べてなくてお腹は空いてるのに何故か何も食べれない。
ますます悪くなる体調、でもせっかくのエルサレムだから時間を潰したくない。
迷路のような石畳の旧市街を、どこに行くともなく歩いていく。
いつの間にかヴィア・ドロローサ(悲しみの道)を歩いていたようだ。
イエス・キリストが十字架をかついで処刑場まで歩いた約1キロの道のり。
人の流れと同じ方向にすすんでいくと、教会まで辿り着いた。

第1留、イエスが死刑判決を受けた場所。今は小学校になっている。
第2留、十字架を背負い、茨の冠を被せられ、鞭打ちされた場所。
第3留、十字架の重みで最初につまづいた場所。
第4留、母マリアが十字架を背負うイエスの姿を見た場所。
第5留、十字架の重みでイエスが手をついた壁。人々が触るので凹んでいる。
第6留、イエスの顔をハンカチで拭ったベロニカの教会。
第7留、イエスの罪状が張り出されると共に、イエスが二度目に倒れた場所。
第8留、イエスが「私のために泣くな」と言った場所。
第9留、またイエスが倒れた場所。ここも人々が触って壁が黒ずんでいる。
第10留、イエスが衣を脱がされた場所。
第11留、イエスが磔にされた教会。
第12留、イエスが息を引き取ったゴルゴダの丘。
第13留、イエスを麻布でくるんだ場所。教会の壁あたり。
第14留、イエスの墓。

辿り着いた聖墳墓教会、(10〜14留)キリストが眠る場所である。
ヴィア・ドロローサの終点。あまり情報もないまま、中に入る。
教会の内部はとても広く、いろいろな小部屋に分割されていた。
入ったらまず、そのモザイクの美しさに圧倒された。トルコの比じゃない。
モザイクに見えない程、絵画に近い程の細かさ。鮮やかな色彩と金色。
階段を上がるとゴルゴダの丘、イエスが十字架に打ち付けられた場所。

      
  イエスを十字架につけたのは、午前九時であった。
  罪状書きには、「ユダヤ人の王」と書いてあった。


すぐ隣には、十字架の上でイエスが息を引き取った場所。
ここにあるイエスの像がやたらリアルで、やつれ、土色をしていた。
その下にはちょうど十字架が立てられた穴が開いていた。
ここでも、祈る人々。床に頭を摩り付けながら、祈り続ける人々。

        
 昼の十二時になると、全地は暗くなり、それが三時まで続いた。
 三時にイエスは大声で叫ばれた。「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ。」
 これは「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
 イエスは大声を出して息を引き取られた。すると、神殿の垂れ幕が上から下まで
 真っ二つに裂けた。百人隊長がイエスの方を向いて、そばに立っていた。
 そして、イエスがこのように息を引き取られたのを見て、
 「本当に、この人は神の子だった」と言った。


階段を下りて、入り口の傍にあるのが、十字架からおろされたイエスが
香油で清められ、麻布でくるまれたという場所。後で知ったことですが。

       
 ヨセフはイエスの遺体を受け取ると、きれいな亜麻布に包み、岩に掘った
 自分の新しい墓の中に納め、墓の入り口には大きな石を転がしておいて立ち去った。

中心のようなところに来た。聖堂に入る人の行列が出来ている。
何も分からないまま並んだが、キリストのお墓だったらしい。
本当に本や情報が無かったのが悔やまれる。どれも後で知ったことばかり。
あまりに長い行列に、途中くじけそうになりつつ、1hほど並んでやっと入った。
待っている間に何かの行列がやってきて、儀式や演奏のようなこともやっていた。
今日が安息日なのと関係があるのか、儀式の間も周りは人でごった返していた。
蝋燭の光に囲まれた、ビロードで美しく飾られた大理石の彫刻。
聖堂の中は狭く、なんとなくここがキリストのお墓であることが感じられた。
イエスのお墓を触ってみる、そして、昔クリスマスに読んだ本を思い出した。
キリストが埋葬され、そして復活したとされる場所。

私はキリスト教ではないし、イエス・キリストも物語の架空の人物なんて風に思ってた。
でも、ここの場所で、イエスが最後に歩いた道を辿り、イエスの十字架や墓を見て、
実際にあったの事のように感じられた。本当に存在したんだって、実感した。
イエスが存在したか存在しなかったか、本当のところは分からないけれど、
今の私は、イエスはいたんだろうと言うだろう。
キリスト教を信じる、信じないは別にして。
(今でも相変わらずの無宗教・多宗教的日本人。
宗教に関しては人によって考えが違って、軽々しい事は言えないのでこの辺で)
これもまた、大きな衝撃だった。イエス・キリストとの出会い。
頭が混乱するくらいの、不思議な感覚。イエスの痕跡。宗教が全ての人々。
宗教の力と、今までに宗教の名の下流された血と、信仰と。
ユダヤ教の嘆きの壁とキリスト教の聖墳墓教会、これらとの出会いは大きい。
私の中の何かを少し変えるくらいの、衝撃的かつ圧倒的な出会いだった。
これだけで、聖地エルサレムに来た価値は十分にあった。

      
 さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリアと
 もう一人のマリアが、墓を見に行った。すると、大きな地震が起こった。
 主の天使が天から降って近寄り、石をわきへ転がし、その上に座ったのである。
 その姿は稲妻のように輝き、衣は雪のように白かった。番兵たちは、
 恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった。 天使は婦人たちに言った。
 「恐れることはない。十字架につけられたイエスを捜しているのだろうが、
 あの方は、ここにはおられない。かねて言われていたとおり、復活なさったのだ。
 さあ、遺体の置いてあった場所を見なさい。」
 

次回もまた、イスラエル編。
イスラエルの国旗がお出迎え
 
ヨルダンで食べたエジプト料理
 
町中から見える岩のドームの金色
 
街並みが美しいエルサレム旧市街
 
細い路地を行く当てもなく歩いてみる
 
石造りの壁と、まっすぐな道
 
昼間の嘆きの壁
 
夜になるとユダヤ教徒で溢れる
 
服装と髭が特徴的なユダヤ教徒
 
女性ももちろん、全身黒い服
 
安息日のためか閉まってたお城
 
中世的な建物、名前は分からず
 
城壁に沿って、中心部を目指す
 
教会の天井から差し込む光
 
天井は広く、どこも装飾が施されている
 
芸術的な美しさのモザイク装飾
 
安息日、何かの儀式に遭遇する
 
お土産品にも並ぶキリストの品
 
物価が高いイスラエルの紙幣
 

 

BACK

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送